蕎麦屋のカレーはなぜうまいのか

蕎麦屋のカレーはなぜうまいのか

突然だが、みなさんは蕎麦屋でカレーを食べたことがあるだろうか?
食べたことが無い人は近所の古びた蕎麦屋で是非食べてほしい。
食べたらあなたはきっとこう言うだろう。

「うまいけどこれが何?」と・・・。

だがしかし不思議なもので、ふとした時にあのなんの変哲もないカレーが脳裏に浮かび、
あなたの空腹を搔き立て、どうにもならなくなるのだ。
この不思議な魅力、いや、魔力はどこから来るのだろうか。
今回はこのメカニズムを深掘りしていきたい。

日本でカレーが国民食になるまで

まずは、カレー自体がいつ日本に伝わり根付いたのかを紐解いていきたい。
調べたところ、ここの話は所説あるそうなので天下のハウス食品様の説をざっくりとご紹介したい。

時は明治時代、文明開化とともにイギリスからカレー粉が持ち込まれたことを大きな契機に日本にカレーが伝来し、明治4年に肉食が解禁され、洋食店でライスカレーが提供されるようになってからカレーという新しい食べ物は急速に広まったそうだ。


しかし、このころは高級食だったそうで、国民食とは言えなかった。
それを打破したのが国産のカレー粉の発明である。
その結果洋食ブームに乗って、広くカレーが広まり日本人がカレーを食すようになった。

しかしこの洋食ブームの波を受け、庶民に親しまれていた和食店や蕎麦屋に陰りが出始め、再起の為に流行りの洋食を取り入れ、アレンジして誕生したのが蕎麦屋のカレーなのである。


その後、固形のルーやレトルトカレーができたり、カレーライスが給食に出るようになり、カレーは日本人の国民食として確固たる地位を築いたそうだ。

だいぶ省略してしまったが、この話はとても面白かったので興味のある方は是非見に行ってほしい。そしてバーモントカレーを買ってほしい。
↓カレーが国民食になるまで
https://housefoods.jp/data/curryhouse/know/trends01.html
↓バーモントカレー
https://item.rakuten.co.jp/showpuromo/4902402853887-2p/?iasid=07rpp_10095___2v-mlqc4l5s-4y-57e74d17-29c3-4735-9a13-1e408ad455d3

繰り広げられるカレー戦争

和食屋の存亡を賭けた当時最新鋭の兵器として誕生した蕎麦屋のカレーの効果もあり、無事国民食として定着したカレーだが、この後昭和前半にスパイシーな黒船、いや、茶船が襲来する。

本場インドのスパイスカレーである。

従来の小麦粉を使うとろみのあるカレーと違い、スパイスを前面に押し出したサラサラの本格カレーは当時の日本人に衝撃を与え、ナンの特異性おいしさとともにブームになり、戦後徐々に勢力を拡大し、2000年代には町中にインド・ネパール料理店が並んだ。


また、同時期の高度経済成長期に北の大地でカレーの概念を覆す革命が起きた。

スープカレーの誕生である。

最初は具なしでスパイスの効いた、いわゆる薬膳スープに近かったが、1990年代後半から具が入った今のスタイルになったことで専門店ブームが起き、2000年代には全国的な名物となった。

蕎麦屋のカレーの異質さ

それではここで登場した戦士たちの概要を登場順に簡単にまとめてみよう。


①洋食屋のカレー:明治初期に登場、洋食の代表格として洋食ブームを牽引

②蕎麦屋のカレー:明治後期に登場、洋食ブームで追い詰められた和食屋の起死回生の一手

③インドカレー:昭和中期に登場、本場の味で一躍ブームに

④スープカレー:平成初期に登場、今までにないカレーの形で専門店ブームが起きる

お分かりだろうか、蕎麦屋のカレーだけブームが起きて無いのだ。


カレーの普及に一役買った存在であることには違いないのだが、民衆がこぞって店に並んだり、専門店が立ち並んだりといった日本の飲食史に名を刻むようなことはなかったのである。

しかしどうだろう、ここまで読んでいただいた皆さんは日本人に長らく愛されていて昨今ちょっとした話題になったりもしている以上、蕎麦屋のカレーには何かがあると思っていただけているのではないだろうか。
次章ではその何かを見つけていきたい。

蕎麦屋のカレーはなぜうまいのか

そもそも蕎麦屋のカレーはどのように作られているのだろうか?
当然レシピによって変わるが、蕎麦屋の大将に蕎麦湯をぶっかけられる位ざっくりいうと

具材を炒める→そばつゆ(出汁)や和の調味料を入れる→カレー粉を入れる\出来上がり/

以上だ。


要は普通のカレーと違うのはベースがスパイスではなく出汁である点だ。

カレーという異分子が、日本の食文化の根幹たる出汁と調和することで、まるで昔から食べていたような錯覚をもたらすのだ。例えるなら、外国人の転校生がクラスみんなから愛される陽キャ男子と仲良しになることで、クラスに秒速で溶け込むようなものだろう。

遠くイギリスからやってきた留学生は、日本文化と強固に結びつく出汁と結びつくことで、間接的に日本文化と強く結びつき、日本文化の仲間入りを果たしたのだ。

日本の食文化は諸外国の味を取り込み、独自に進化させることを得意としているのは周知の事実だと思うが、あれだけ個性の強いカレーをも受け入れ、自分の一部としてしまう日本の食文化は、懐が深いを通り越して自分すら取り込まれそうな恐怖すら感じる。

出汁という概念は縄文時代からあるらしいが、出汁という文言が歴史に出てくるのは室町時代からだそうだ。室町時代から続く出汁の文化、すなわち日本の食文化、すなわち日本の歴史、つまり蕎麦屋のカレーを食べるということは日本そのものを食べているのとほぼ同義と言ってもいい。

そんなものうまいに決まっている。

他のカレーにあるような、ブームになるほどの衝撃・爆発力はないのかもしれないが、どんな時でもそばに寄り添ってくれる優しさがそこにはある。

低賃金での長時間労働や、SNS疲れなどが話題に上がる昨今、蕎麦屋でその優しさに触れ、明日もがんばろうと生きる活力を得ている人々が多くなり、蕎麦屋のカレー初のブームが起き始めているのかもしれない。

最初に「うまいけどこれが何?」と真顔で店を出たあなたが、次食べる時に懐かしさからくる安心感で顔を綻ばせて店を出ることを願って、3つ目のナンを平らげ腹がパンパンになった私は4つ目のナンを勧めてくるカタコトの店員を華麗にスルーし店を後にする。

私がこの記事を書いたよ!

とみ。

とみ。 ガジェット好きの底辺サラリーマン / 男性

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